近山スクール東京ニュースNo25

2009年12月01日 近山スクール東京
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共催:芝浦工大オープンテクノカレッジ

2009年第二回講座「木造住宅の構造」のご報告

 近山スクール東京2009第二回講座「木造住宅の構造」が11月21日(土)に行われました。先ごろEディフェンスで行われた木造三階建て住宅の性能評価の実大実験で倒壊した「長期優良住宅」対応の試験体に対する山辺さんのコメントもあり、非常に興味深い内容でした。会場からは多くの質問が寄せられましたが、時間の都合ですべてに回答することができませんでした。そこで、今回の近山スクール東京ニュースNo25では、そのとき会場から寄せられた質問に対する山辺さんからの回答を掲載いたします。

〜索引〜

地盤調査について

地盤調査方法として木造2階建てだとスウェーデン式サウンディング(S.S式)が多いと思いますが、S.S式のデータの信頼度はいかがでしょうか。また、3階建ての場合でもS.S式のデータを使ってもいいのでしょうか(設計)
S.S式の信頼度は歴史的にも実績があり、決して低いものではありません。法的にも、静的貫入試験方法の1つとして位置づけられています。但し、使いこなす上ではデータを読む力が必要。また、3階建てだからといって使えないものではありません。特徴としては、平板載荷試験との比較だとS.S式の方が安全側の結果となる傾向があります。また、S.S式は沈下量の推定に必要なデータが得られます。(平板載荷試験は表層のデータしか情報を得られません)


地盤データの具体的な見方(工務店)
S.S式のデータの見方は「ヤマベの木構造」などをご参照ください。


良い地盤調査会社の見極め方などはあるのでしょうか(設計)
データの見方や地盤についての基本事項を理解しておくことが必要。そうすることで、相手の見解が良心的なものかどうか判断できるでしょう。


基礎について

ベタ基礎採用時の内部立上りの必要性 (点検するために一部切り欠いてしまう時)(工務店(大工))
点検口で基礎の一部分を欠いてしまうということは、例えるなら2間間の梁の下端を、梁せい半分程度一部分切り取ってしまっているようなもの。もし基礎の立上りを気にせずに進める場合は、地中梁のみ(立上り部分を梁として期待しない)で必要な断面が確保できるように計画するとよいでしょう。外周のみ地中梁を設けて内部は立上りのみで進めたいのであれば、基礎梁の検定をした上で人通口の位置や開口寸法を決定する必要があります。この検定には構造の理解力が問われます。(地中梁のスパンが飛んでいる所や沈下の予想される地盤では要注意)


軸組みについて

プレカット主流において必ずしも建物の四隅に通し柱がこないことが多い。特にバルコニーをキャンティで持ち出すときは3尺バックさせて通し柱を入れるケースが多いが、はたして通し柱の必要性があるのか(設計)
基準法で2階建て以上は、すみ柱又はこれに準ずる柱は通し柱を求められています。ただし、一般的にプレカットの建物の通し柱で使用されるサイズは3.5角或いは4寸角では、大地震時に折れる可能性があるので、折れても柱が抜け落ちてしまわないよう(大地震時にも鉛直力の支持能力を失わないよう)金物などで緊結しておくとよいでしょう。


耐力壁について

右図の1階耐力壁は(1階床+2階床)で決めてよいか(設計)


法規の壁量は多雪地域では少なくないか(積雪時に地震がなければいいが)(設計)
確かに少ないです(告示の場合)。一般的には対策として、性能表示における壁料は、多雪区域のものが用意されているので、参照してください。また告示には枠組壁工法用ですが、多雪区域のものが用意されていますので、そちらも合わせて参照ください。


水平構面について

根太レス工法と従来の根太工法だと(一概には決められないと思いますが)地震に対してはどちらがよいのでしょうか(設計)
床の水平剛性の話と解釈すれば、根太レス工法は合板の厚さに応じて床剛性も高くなります。根太工法は根太の取り付け方(転ばし、半欠き、落とし込み)によって剛性も変わりますが、全般的に床板も薄く高い剛性は期待できません。


水平構面をしっかりつくるということは、一部に力を集中させずに全体に力を伝え分散させて、全体で耐力をとるという考えで良いでしょうか。2×4では、かなり重要な要素と考えておりましたが、軸組み工法でもかなり意識した方がよいのでしょうか(設計)
その通りです。耐力壁が全体的に均等に配置されていれば、床はやわらかくても成立しますが、吹抜けや構面間距離が大きいと床の剛性(耐力)が必要です。


ベタ基礎採用時の土台火打ちの必要性(大工)
構造的には不要です。但し、縁の下があるような建物(土台が基礎にのっていなく、束建てになっているような造り)は必要。


床倍率について、床や屋根面の仕様で合板や火打ちを使わないで、床板又は野地板のみでは、告示では幅180mm杉板+12mm以上と、働き巾の大きいのもしかないのですか、働き巾の小さいもの又はJパネル等以外で何か実験で得たデータはありませんか(設計)
床倍率の認定については、家づくりの各グループで実験は行われていて、そのデータを基に確認申請を提出されています。


接合部について

羽子板ボルトの是非について(緩んで効かなくなっても今の制度では問題とされないようですが)
金物工法の木造の問題点ではあります。但し、木が乾燥収縮して羽子板ボルトに隙間が生じたからといって直ちに大地震時にそれが理由で倒壊に至るとまで、考える必要はないでしょう。また、緩み止対策としてスプリングワッシャ付き座金を利用する方法もあります。


金物なしで木造住宅は建てることができるのでしょうか。また、金物なしの構造計算は可能でしょうか(製造業)
設計法にもよりますが、接合部の耐力など現行の規準を考えると、むずかしいのではないでしょうか。実験データを添付するなどしていかないと難しいでしょう。


胴差、桁と床梁の天端が揃うとき、その仕口に羽子板ボルトのような金物を使わないで、梁現しの空間をつくることは可能でしょうか(工務店)
金物を見せない様には出来るでしょう。いずれにしても梁が抜け出さないよう考える必要があります。


床の剛性を大きくした場合に、梁の柱からの抜けを考慮する必要がありますが、金物を使わない各仕口ごとの引抜耐力の参考値がありましたら教えてください(設計)
例えば、込栓を1本のところを2本打つとか、シャチ栓を4本にするなど(検証は必要です)。また、現在データ数はまだ少ないですが、住木センターのウェブサイト上に「木造住宅耐力要素データベース」が公開されています。


渡りあご工法・伝統工法について

渡りあご工法にしたとき、いかなる場合でも金物は必要ないのでしょうか(工務店)
壁の倍率や配置の仕方によっては必要です。むしろ、検討すると金物が必要になるのが通常で、金物がなくても大丈夫なように工夫と検証を積み重ねているのです。


「木は締めて使う」という方法(そのための金物もあります)が全体の耐力にどの位貢献するものでしょうか。
見た目にすかない様に締めることは可能でしょうが、地震時に必要にされる耐力を期待することは難しいでしょう。


その他

「粘り」というものを考えた時、土台の上で建物が動く「免震工法」は「良い構造」と考えて良いのでしょうか(製造業勤務)
「粘り」とは、もろい壊れ方をしないということで、「免振」とは、地震動の入力そのものを減らすということです。


図のような高温乾燥四面スリット材について(右図) スリットが白線帯の内側まで切られているため、高温乾燥材であっても内部割れが少ないことをメーカーはセールスポイントにしていますし、実物を見ても内部割れはほとんどありませんので長ほぞ込栓でも使えるのではないかと予想していますが(木材加工)

構造的に実験をして検証する価値はあると思いますが、意匠の面も考慮されるといいと思います。


2階増築が今とってもむずかしい。耐震補強技術を使用するなどして可能ではないか(役所では既存の基礎に新荷重をのせるのはダメと言っている)(設計)
建物全体の荷重が増えるので、鉛直・水平方向の両面で現実的にハードルが高いのは間違いありません。


いつ構造行政は整理されるのでしょうか(設計)
なかなかむずかしい質問です。根拠のある設計を行うよう心がけることが大切だと思います。


長期優良住宅では耐震等級2が必要だが、壁倍率1.25倍以上にして建物をかたくすることがはたして本当の長期優良住宅になるのか少し疑問を感じる(Eディフェンスの実大実験の倒壊をみて)(設計)
Eディフェンスの件は現在検討を進めているところです。


次回のお知らせ

 次回12月19日(土)は、省エネや環境負荷の低減の分野で国の様々な基準づくりに係わられている芝浦工大の秋元さんに自立循環型住宅とCASBEE(戸建)の考え方やエコデザインのための基本と環境評価のシステムについてお話しいただきます。 どうぞご期待ください。

Midori Kitajima