近山スクール東京ニュースNo24

2009年10月30日 近山スクール東京
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共催:芝浦工大オープンテクノカレッジ

2009年第一回講座「家づくりのいまと未来」のご報告

 近山スクール東京2009第一回講座「家づくりのいまと未来」が10月17日(土)に行われました。50名近い方々にお集まりいただき、大盛況のうちに終了いたしました。本当にありがとうございました。参加された皆さんからは今の木の家づくりを取り巻く複雑な状況と今後の動向への関心の高さを感じられました。

 講座前半は、今年度の講座全体をコーディネートして下さった蟹沢宏剛さん(芝浦工業大学教授)から、今回の講座全体のコンセプトと各回ごとのテーマについて説明をしていただきました。

 最近の建築に関する法制度の改正は、伝統的な木造住宅や自然素材を使った家づくりのことを必ずしも考慮しているとはいえないという現状があります。そこで、それらの制度がどのような考え方で定められているのかを知ることが大切です。また、今後具体的にどのようにして行くべきかを講師も参加者ともに考えようという今回の講座全体にわたるコンセプトについて、蟹沢さんのご専門である職人の技能とものづくり、日本の生産システムについての話題を交えながら説明していただきました。
 日本のものづくりは、職人の持つ技能が外国に比べると格段に高いことによって高品質な製品を生み出しているということはよく聞きます。このことは多くの人がかかわる高層ビルなどの大規模建築についても例外ではなく、日本では職人の技能に依存する部分が多いのだそうです。しかし、大工や左官などの熟練技能者の多くは高齢化し、最近では激減していて、このような生産システムは近い将来成り立たなくなるのではないかということでした。

 後半は松村秀一さん(東京大学大学院教授)の講座でした。話が持ち上がった当初は200年住宅とよばれて話題になり、今では制度となった長期優良住宅について、かつて自民党内で検討されていたときの経緯を含めて説明していただきました。ただし、今回の近山スクール東京の講座では、国の制度の話をそのまま解説するのではなく、制度の持つ意味の側面をさまざまな角度から解説していただきました。
 まず、住宅はすでにストックとして5000万戸以上があり、そのうちの6割が現在の新築住宅に求められる要求を満足できるものであるという指摘です。ですから、今後新しくつくる住宅のことをあれこれ議論するよりも、すでにストックとしてある住宅をこれからどうやって長期間使用してゆくかという問題のほうが現実的で重要な課題であるとのことです。このことを裏づけとなるデータとともにわかりやすく説明していただきました。
 確かに200年を超えて利用することを考えると、メンテナンスやリフォームの技術やそれをサポートする諸制度が非常に重要であることが理解できます。長期優良住宅のキーポイントは住宅の維持システムの方がメインであり、新築時のハード的な要件というのは必要ではあるもののそれだけを考えていても成り立たないものであると思いました。
 それにしても200年というのは非常に長い時間です。先生も仰ってましたが、法律や制度、技術、経済状況、ライフスタイルがどんどん変わる中では、かつての有名な建築家が総力を挙げて建て、かつその建築家の代表作とされるほどの名建築であっても、築後数十年で取り壊されている現実を考えると、はじめから200年持つハードとしてのスペックを追求することは現実的でないことは明らかです。

 講座の終了後は、会場近所の中華料理屋で恒例の懇親会が行われました。講師の先生を交えて会話も弾んでいました。参加者同士もお互いに情報交換し、有意義な時間を過ごしていただけたのではないでしょうか。

 次回11月21日(土)は実践的な木構造家としてご活躍され、近山スクール東京の運営委員でもある山辺豊彦さんの人気講座「わかりやすい木造住宅の構造・初級編」です。ご期待ください。

Midori Kitajima