近山スクール東京ニュースNo21

2009年2月5日 近山スクール東京
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共催:芝浦工大オープンテクノカレッジ

1月17日 第4講座「これだけは踏まえておきたい木構造」の報告


山辺先生の写真
山辺豊彦氏
山辺豊彦(山辺構造設計事務所)

 木造軸組構法の設計・施工にかかわる人が知っておくべき基礎知識についての講演が演習を交えて行われました。先日神戸のEディフェンスで行われた伝統的軸組構法住宅の振動台実験の様子も動画での紹介や梁の断面計算の演習もありわかりやすい内容でした。
◆ 法改正とこれからの構造設計

 いわゆる“四号特例”が時期は未定ながらも廃止の方向であり、今まで建築士に委ねられてきた木造住宅の構造関係の図面も確認申請で必要になります。木構造の基本を十分理解した上で、確認業務にあたることが大切です。また、建主への説明責任も大切なので、その意味でもしっかり学びましょう。

 伝統工法による木造も法改正の例外ではなく、現在厳しい状況にあります。数々の被災経験から生まれ最低限の質を確保するための建築基準法は、現時点では、変形性能に優れている伝統工法を十分に評価出来ない内容になっています。実大実験等により設計出来る様に検証中ですが、まとめられるまで数年を要するでしょう。それまでの間、伝統的技術の実践と継承の機会が失われない様に、確認申請の“図書省略制度”の活用(注1)を検討中との報告がありました。

 近くの山の木が活用し難くなるおそれがある、とありました。法改正は構造材の性能の表示化を求めようとしているが、それを測定する設備を地域の家づくりに取り組む人々に望むことは負担も大きい。また、木の家づくりを支えてきた人々は、法律が問題視する以前から、一本一本の木を見て時間をかけて適材適所に使ってきたわけだから、もう少し簡便な検査方法でも必要十分ではないか、と投げかけていました。

 このほかにも、住宅瑕疵担保履行法、確認審査の方法と分類(構造計算ルート 図参照)、工事監理等についての注意点を触れていただきました。

◆ 木造軸組構法の構造計画の注意点


 いい木の家をつくる上で、地震や台風に耐えるしっかりした造りであることは大切です。山辺氏から、木造住宅全体の構造計画を考えるにあたって大切なのは、床剛性(合板などを使った“固めの床”か、小幅板などを使った“柔らかめの床”か)と耐力壁の配置のバランスを考えること、と説明がありました。壁の数を減らし可変性に富む大きな空間を必要とするときは床剛性を高める必要があり、無垢板や土壁でつくる自然味溢れる家を建てたいときは壁の間隔を2間程度に配置していくとよいそうです。また、柱と梁の軸組をきれいに整理しながら間取りを考えていくことで、質の高い家づくりを実践してほしいということです。

 家を支える基礎と地盤も重要です。基準法の改正や住宅瑕疵担保履行法が今年10月施行の関係もあり、地盤を木造住宅でも鉄筋コンクリートや鉄骨造のように調査する必要があります。木造住宅ではスウェーデン式サウンディング試験を実施することが一般的ですが、その試験データの読み方、許容支持力と圧密沈下量の推定方法を学びました。また、地盤と上部構造の間を取り持つ基礎の役割と計画上の注意点について説明がありました。

 このほかにも、構造各部の注意点について説明があり、また、床梁のたわみの演習を受講生の皆さんで行いました。たわみ量については現行法規の1/250ですべて計画すると居住性に問題が生ずる場合があるとの注意がありました。

◆ 実大実験からわかること

 先日神戸のEディフェンスで行われた、関東型と関西型の伝統的木造軸組構法住宅の震動台実験の様子を紹介し、神戸波フルスケールでも倒壊には至らなかったとの報告がありました。1階の損傷が大きく2階はそれほどでもないので、たとえば耐震改修が必要な木の家では1階の補強から取り組むとよく、同時に大きな変形を起こさないよう耐力壁の偏心を少なくなるよう心掛けるように、とありました。

 渡り顎構法でつくられた実験住宅の実大実験のお話がありました。土壁の耐力壁、小幅板の床、長ホゾ込栓と追掛大栓の軸組による構造システムの木造は、大地震レベルの変形で土壁は損傷するものの、長ホゾ込栓を含めて軸組には目立った損傷はなかったと報告がありました。

会場の様子


(注1)図書省略制度について 図書省略の認定は、国土交通大臣があらかじめ安全であると認定した構造について、通常の構造計算書の代わりに国土交通大臣が指定した計算書をもって確認申請図書とすることができる制度。これにより、構造計算に係る審査を簡略することが可能となり、構造計算適合性判定についても不要。


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<参考図書>
環境の入れ子構造

(110のキーワードで学ぶ)『世界で一番やさしい木構造』山辺豊彦著 エクスナレッジ
(前略)このように建築をめぐる諸制度が大きく変化し、構造に関する判断条件の明確化・厳格化が進んでいくなか、最も危惧されるのは、法の存在がますます大きくなることで、設計者が単なる書類づくりに追われて思考停止状態に陥ることです。言うまでもなく、構造計算は建物の安全性を確保するための検証 手段の1つでしかありません。(中略)本書は、「木造軸組構法」の家づくりをテーマに、設計・施工にかかわるすべての人が知っておくべき基本事項を抽出 して、その構造的な役割や意味を、できる限り数式を用いずイラストを多用して解説したものです。
とある通り、最低限知っておくべき木構造の基本が分かりやすく書かれた書籍です。これから木造軸組構法の家づくりに取り組む方、きちんと木構造を学び直 そうという方に。

Midori Kitajima