近山スクール東京ニュースNo19

2008年12月5日 近山スクール東京
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11月8日 第2回講座「長持ちする木造住宅と、その循環を考える」の報告


 近山スクール東京の第2回講座は「長持ちする木造住宅とその循環を考える」をテーマに行われました。 第1講は埼玉県で解体工事および産業廃棄物処理業を営む桑原一男さんに建築にまつわるゴミの現状と産業廃棄物処理業界を取り巻くさまざまな問題についてお話ししていただきました。続く第2講では、芝浦工業大学准教授で近山スクール東京の運営委員でもある蟹沢宏剛さんが、長持ちする住宅のありかたについて、ドイツとラオスの木造住宅の事例を多くの写真とともに紹介しながら、解説していただきました。

◆ 第1講 木造住宅の廃材はどこへ行く?


桑原 一男 クワバラ・パンぷキン代表取締役

桑原さんの写真  近年の環境意識の高まりと共に、産業廃棄物処理の業界は急速に変わりつつあるそうです。法的に厳しく規制されるようになり、その結果、業界の体質は確かに改善してきてはいるものの、不法投棄の問題は一向になくなっていません。その原因は、基本的には廃棄物処理業者の受け取る報酬が廃棄物を適正に処理するのに十分でないということがありますが、一方では解体業者が廃棄物を「自ら処理」する限りにおいてはマニフェスト伝票は必要ないということが不法投棄の温床になっていると言う指摘がありました。そういった不法投棄業者が低価格で仕事を受けるために廃棄物処理の価格水準がますます低迷し、適正に処理しようとしている業者が苦しんでいるのが現状だそうです。こうした不法投棄をなくすためには、まずは解体業者による「自ら処理」を規制することだと言います。
 また、桑原さんの話を聞いていると、すべての廃棄物を適正に処理しようとしても、それを受け入れるだけの施設がそもそも足りていないのではないかと感じます。日本は国土が狭く処分場をあたらしく作るのも大変ですから、まずはゴミを減らす努力をしなければならないと感じました。

 桑原さんのおじいさんは浅草で大正時代から解体をやっておられました。昔は、解体で出てきた木材は古材(ふるざい)といって売れたそうです。ですから昔の職人には壊す技術がありました。桑原さん自身も解体業の3代目としてリサイクルにつながる解体技術を重視しておられます。解体技術の向上は分別につながります。きちんと分別すれば物によってはリサイクルすることができますし、リサイクルできなくて最終処分する場合でも、より低コストな安定型処分場で処理できるようになることもあります。
 安定型処分場というのは、がれき類、ガラス及び陶器くず、金属くず、廃プラスチック類で、昔はこれにゴムくずを加えた安定型5品目と呼ばれましたが、こういうものを埋め立てる処分場のことです。それ以外は、防水シートを何重にも重ねたり、常に水質を厳しくチェックする必要のある管理型処分場で処分しなければいけません。

 住宅建築における廃棄物を具体的に見てみると、今、問題になっているのは外壁材だそうです。いわゆるサイディングですが、これらには木質チップが入っていたり、石膏ボードが複合的に使われているためにリサイクルも安定型処分場も不可能になっているのだそうです。結局外壁材は管理型で処分するしかないのですが、関東圏には管理型処分場はそれほど多くないため、何百キロも離れた処分場に大型トラックで積み込んで持って行っている状況だそうです。
 素材として単品であることがリサイクルの条件なので、さまざまな素材を工業的に加工して組み合わせた複合建材は、リサイクルの観点からよく検討してから導入して欲しいと桑原さんは言います。
 それから今後は石膏ボードが問題になってくるだろうと言います。今後解体する家は石膏ボードが大量に使われています。石膏ボードのリサイクルの受け皿は徐々に整いつつあるものの、とにかく大量に出てくるのと、安定型では処分できないため大きな問題になる可能性があるそうです。

講義風景の写真

◆ 第2講 循環を考えた長寿命住宅のあり方・つくり方


蟹沢宏剛 芝浦工業大学工学部建築科准教授

蟹沢さんの写真  芝浦工大の建築学科では昔から木造について教えているそうです。他の大学で木造を教えるところは少ないのですが、その原因として昭和34年に日本建築学会が「建築防災に関する決議」を採択し、その中で「防火、耐風水害のための木造禁止」を明確に謳ったことを紹介されました。この決議が基準法に影響を与えただろうと予想できますし、学会で禁止した以上は大学でそれを研究したり教育することは控えざるを得なかっただろうと思われます。これを受けて木はとにかく燃えやすいと定められわけで、今では過剰なまでに石膏ボードを使わなければ家は作れなくなってしまいました。そして今度は石膏ボードのリサイクルの話にもつながってくることだと感じました。

 木は適切な環境では長持ちするということを、いろいろな例を挙げて説明されました。ヒノキは切ってから200年間強度が上がり続け、800年間は切ったときよりも強いというデータがあるそうです(木の文化 SD選書、法隆寺を支えた木、小原次郎 著)。またシロアリや不朽菌による劣化については、水分、空気、気温の3つの条件がそろって初めて問題になるのだそうで、空気のない地中や水中では木はとても長持ちするということを仰っていました。その例として、丸ビルを解体したときに出てきた杭として使われていたベイマツを紹介されました。5000本見つかってほとんど腐っていなかったそうです。また、神代木、いわゆる埋もれ木にいたっては地中で数百年を経ているものもあるそうです。ただし、そうは言っても水のかかる基礎の部分などは腐りやすいですから、傷んだ部分だけを取り替える技術が昔からあります。
 それから木が燃えやすいと考えているのは日本人の特徴で、例えば日本のホテルのドアは鉄製ですが、ヨーロッパのホテルではよく木が使われているそうです。

 ドイツのクヴェルトリンブルグは木造の町並みが世界遺産に登録されている街ですが、そこを訪問されたときの写真を見せていただきました。古いものでは500年前に立てられた木造の建物が今でも使われている街です。古い建物は木の変形により、かなり大きく傾いているのですが、それを補修しながら今も大事に住み継いでいる様子でした。この街の木造建築は軸組みに土壁という日本の木造の形式に非常に近いものでした。
 またラオスの山の中には、かつての日本と同様な建築技術を使って今でも家づくりをしている地方があるそうです。その紹介を、これもたくさんの写真とともにしていただきました。この地方では基本的に金属が入ってきたのが最近らしいのですが、部材の接合は金物ではなく仕口を使っています。基本的には貫や栓を使って部材同士を留めているようです。板を作るための道具も昔の日本のチョウナや槍鉋、オガを使った製材をやっているそうで、まさに日本の江戸時代の家づくりが再現されているということです。

スライドからの抜粋(クリックすると拡大します)


 つづいて長寿命住宅を考える上での考えを話されました。まず省エネ法については、仕様規定による評価となっているために、蓄熱暖房機を例に挙げ、仕様にないものが使えなくなってしまうことの問題点を指摘されました。長寿住宅では、設備や配管も交換を前提にした設計、間取り変更のための構造的な基本(構面)をきちんと設計する、メンテナンスの計画、などについてひとつひとつ詳しく解説されていました。

講義風景の写真

Midori Kitajima