近山スクール東京ニュースNo18

2008年10月30日 近山スクール東京
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共催:芝浦工大オープンテクノカレッジ

10月4日 第1回講座 「日本の山の木を生かして使うには」の報告


 2008年近山スクール東京の第1回講座は、「日本の山の木を生かして使うには」と題して、今月4日に行われました。前段は徳島のTSウッドハウス協同組合の和田さん、後段は滋賀で大工をしている宮内さんによるお話を伺いました。

◆ 第1講 日本の山から発信する「国産材の使い方」


和田善行 TSウッドハウス協同組合理事

和田さんの写真  TSウッドハウス協同組合は、徳島県南部の木頭林業と呼ばれる古くからの良質な杉の産地で、和田さんを含む5名の林業家が集まって作った協同組合です。和田さんたちは、自分たちが育ててきた大切な杉の木を、きちんと納得できるかたちで家づくりに生かして欲しいという強い思いがあり、それを実現するためにこれまでさまざまな取り組みをなさってきました。

 まず、材料としての杉を知ろうということで、杉の持つ特性を国立林業試験場(現在の森林総合研究所)で科学的に分析しました。すると、杉というのはヤング率の割には強度があるという結果が得られました。そのような杉の利点を理解したうえで杉を構造材としても使ってもらおうとしています。

 また、木は秋から冬にかけてが切り旬で、その時期に切った木は腐りにくく虫がつきにくいなど、さまざまな面で優れているといわれていますが、和田さんたちは季節ごとにでんぷんの含有量の変化を調べ、実際にその時期のでんぷん含有量が少なくなっていることを確認しました。そのような裏付けをとった上で、TSウッドハウスは切り旬を守るということをテーマとして掲げています。

 それから、葉枯らし乾燥にも取り組んでおられます。葉枯らし乾燥とは、切り倒した木に枝をつけたまま置くことで、葉からの蒸散作用を利用して内部の水分を抜く方法ですが、その間も木の細胞は生きているため、でんぷんが消費されるなどの好ましい成分の変化もあるそうです。高温で処理する人工乾燥は、表面は割れなくても木の芯付近で割れる「内部割れ」が起こるし、せっかくの木の香りも全部失われてしまうので、本当の木を使いたいのならぜひ自然乾燥のものを選んで欲しいといいます。

 そのほかにも木のことを知り尽くした林業家ならではの選木や木取りなどの話があり、本物の大工が本気をだして勝負したくなるような本物の材料を提供してやろうという意気込みには一切の妥協がありません。

 しかし、そんな和田さんも、これからの山のことは憂慮されています。現在の杉の値段を30年前と比べてみると、製品価格では約3倍になっていますが、山で立っている状態の価格(山元立木価格)ではなんと30年前より下がっているのだそうです。そんな状況にありながら、一方では外国産の合板が入ってこなくなり国産材を使った合板工場が急ピッチで建設されており、合板用に木がどんどん切り始められています。ただ切って使うだけでなく、きちんと植林のことも考えた木の利用を考えてゆかなければならないというのが和田さんの主張です。

◆ 第2講 大工の立場で考える木材の乾燥と工法


宮内寿和 宮内建築

宮内さんの写真  後段では滋賀県で大工をなさっている宮内さんの話を伺いました。宮内さんは滋賀県の山の状況を詳しく説明された上で、これからの日本の山の問題を指摘されました。また、ご自身が考案した4寸角挟み梁工法がどのようにして生まれてきたかという経緯、その特徴、実際に建てられたときのエピソードをお話されました。また、4寸角挟み梁工法を実現する上で必要だった水中乾燥の取り組みについて説明されました。

 前段で和田さんの話の中にもありましたが、山に20億立米あると言われている日本の森林資源は、いま合板という形で見直されつつあります。日本の木材自給率はこれまで20%程度でしたが、それが100%になったとすると、日本の山の木は約50年でなくなってしまうそうです。ただでさえ伐採量が少ないのに合板という形の需要が増えることで、木の家づくりをやりたくても材料が入らない時代がくるのではないかという危機感を宮内さんは感じています。

 また、戦後の拡大造林で植えられた木のなかには、芯の部分の強度が足りないものが多いそうで、木の芯の部分を多用する日本の伝統的な仕口や継ぎ手は、こうした木には向いていないといいます。構造実験をみていると最初に壊れるのは断面欠損の大きい仕口の部分です。地震でこの仕口が最初に壊れて家が倒壊するのです。だから宮内さんは大工として絶対に壊れない仕口を作りたい、と強い信念を抱いてこられました。そこで宮内さんが考えたのが4寸角挟み梁工法なのです。この工法は仕口に特徴があり非常に強度が高いのですが、4寸角の角材だけを使うので、製材や流通の面で有利であり、プレカットにも対応できて量産化が可能です。4寸角の木をうまく使い分ける必要があるので、木を見る職人が育ちます。それから、フレームだけで十分な耐力があるので壁を必要とせず結果的にリフォームなどで長く使える家になるということです。

4寸角挟み梁工法の模型の写真  ところが、この工法を実現するためには背割れのない木材が必要なのです。そもそも割れなど無いに越したことはない、というのが宮内さんの持論ですが、実際誰もがそう思っているはずだといいます。そこで水中乾燥に取り組み始めました。ポリテクカレッジ滋賀の定成先生と一緒に研究されています。実際に水中乾燥をしてみると、確かに割れが少なくなり、大きな割れや、木口の割れはほとんど見られなくなるそうです。しかもそれだけでなく、この水中乾燥材を使うと、まず大工として仕事がしやすいといいます。木が硬くなっていて艶があり、内部応力が抜けて落ち着いている、厳しい大工の目で見て、そんな確かな感触を得ているとのことでした。

講義風景の写真

10月25日 「フィールドツアー in 原村」の報告


 10月25日土曜日、NPO法人エコラ倶楽部の協力をいただき、近山スクール東京2008「フィールドツアー in原村」が開催されました。約20名の参加者が慣れない森林作業に汗を流しました。数日前から天候が危ぶまれていましたが当日はなんとか持ちなおして、一時は八ヶ岳も姿を見せてくれました。曇りでしたが雨もなく終わってみれば涼しくて森林作業にはちょうど良い秋の一日となりました。


ビデオダイジェスト(約10分)


直井さんの写真
直井さん
大井さんの写真
大井さん
大場さんの写真
大場さん
原さんの写真
原さん


手ノコで伐採する写真
手ノコでの伐採

チェーンソー体験の写真
チェーンソー体験

玉切りの写真
玉切りの様子

切り出した丸太の写真
切り出した丸太
 司会進行はエコラ倶楽部理事で、近山スクール東京の運営委員でもある直井さん(直井建築工房 エコロジーライフ花 代表)により進められました。はじめにエコラ倶楽部理事長の大井さん(アトリエDEF代表)からエコラ倶楽部の目的や理念について、それから15ヘクタールにもおよぶ原村エコラの森についての説明がありました。続いてお話いただいたのはエコラ倶楽部副理事の大場さん(栗駒木材)で、日本の山の状況や木材消費、世界の木材にまつわる情勢など広い視野のお話をしていただきました。続いて昨年の近山スクール東京で講師を務めていただいた松本市で素材生産をなさっている原さん(きこり、猟師)から、長野県の山の現状や彼女が普段山で接しているカラマツについてお話を伺いました。

 引き続き行われた森林体験では、エコラの森に60年前に植えられたカラマツの間伐作業を参加者全員で行いました。伐倒は小さな手ノコで行います。最初に原さんから切り方の実演があり、ノコの入れ方と受け口、追い口の説明、それから安全上の注意など分かりやすい説明がありました。その後、参加者二人ずつがペアとなり、樹齢60年にもなる直径25cm、樹高20mほどあるカラマツを伐倒してゆきました。参加者の中にはチェーンソーを使ってみたいという方もおられ、原さんと大場さんの指導のもと、見事に伐倒されていました。玉切りはスタッフの方が中心となってチェーンソーで行いました。最後に玉切った丸太を道路脇まで運ぶのですが、ずっしりと肩にかかる木の重さを感じることは、森林作業の大変さや木の価値について考えさせられる体験でした。作業をしていると、森に3頭の鹿が現われ駆け抜けて行きました。今年の春にカラマツを間伐し広葉樹を植林していますから、この森には食べ物が豊富にあるのかもしれません。

 自分の人生よりも長い年月を生きてきた木を切り倒すという行為に参加者の誰もが畏れを感じただろうと思います。その意味でも今回の体験は非常に価値があるものでした。大場さんも仰っていましたが、せめて100年は使ってあげたい、という気持ちになりました。合板や集成材では100年もたないでしょう。家づくりにおいて無垢の木を長く大事に使い続けていくための知恵がいま求められていると思います。最後にエコラ倶楽部のスタッフの方々には朝早くから準備をしていただき本当に感謝しています。参加者に代わりまして改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。(松田)


参加者の記念写真
参加者で記念撮影 2008年10月25日(土)


Midori Kitajima