近山ニュース号外2008/12/22

2008年12月22日 近山スクール東京
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tel:03-5971-2309 / fax:03-5971-2329
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共催:芝浦工大オープンテクノカレッジ

2008年5月17日 フィールドツアーinつくば


遅くなりましたが、今年5月に行われたフィールドツアーinつくばでの様子をお伝えいたします。
午前中、つくば学園にあるけんちく工房邑の広い敷地にある豚舎を改築した設計事務所と古材など木材置き場の見学をしました。

草屋根のある事務所
草屋根のある事務所


解体した民家の古材天日干し
解体した民家の古材天日干し


午後は、近くの民家移築した会場に移り講演会を開催しました。 けんちく工房邑の加藤英司さんから「古民家から学ぶ」を、武蔵工業大学の宿谷昌則教授から「建築と健康」と題して講演していただき、参加者は熱心に聞いていました。

加藤英司さん
加藤英司さん


宿谷昌則教授
宿谷昌則教授


会場風景
会場風景


ドイツ出身の工学博士、ヨーロッパの環境技術を日本に紹介しているバルテンシュタインさん(IFCJ株 エコライフラボ)は「ランニングコストゼロの家への挑戦」と題して講演を行いました。次にその概略を掲載します。

ランニングコストゼロの家への挑戦 O.バルテンシュタイン氏

O.バルテンシュタイン氏

O.バルテンシュタイン イフコンピュータージャパン株式会社代表取締役

◆「普通」を疑え

家の設計を考えると頭が「普通」に支配される。言わば、「普通」を疑うべきである。

 どこでもある、ごく当たり前、考えるほどではないものこそ、見直せば、住まいの快適さとエネルギーの有効利用に貢献するチャンスをくれます。

4つの例:
  • 壁にビニールクロスを貼る
  • ローンを組んで家を買う
  • トイレを流す
  • お風呂を流す
普通の家にある仕組みだが、どうでしょう:

 壁のビニルクロスは壁の湿気調整の能力を防げます。木質でもコンクリートでも、そのままのほうが室内気候を安定させることができます。

 ローンを組んで家を買うのは避けられないと前提に考える人が多いと思われます。家族の成長とともに成長する家を検討してみるのは如何でしょうか。生活空間を自分のニーズに合わせて、自分ペースで改善していく。銀行に流れるファイナンスの費用よりも家そのものに投資できるようになります。

 トイレを流すの「普通」はまた楽しい頭の体操。東京の場合、秩父あたりにダムを建設し、ポンプで水を長距離運搬し、薬物で処理し、東京の家に流し込む。そのときは一応飲み水です。その飲み水の大半は飲むわけではない。トイレで汚して捨てるだけです。と同時に、東京の下水システムは雨が降るたびにあふれ、海を汚染しています。雨のとき、その場所で降る水を家ごとに一時的に溜め、後でその雨水をトイレに使えば、ダム公害も下水のパンクも緩和できます。おまけに非常時の水源、防火水にもなります。

 お風呂を流すのも面白い。冬の場合、水を5度から45度に上げれば、気持ちよくお湯につかれます。40度の差です。しかし35度でぬるくなってしまうので、そのお湯を捨てています。10度だけの差ですので、有効利用したのは投入したエネルギーのたった1/4です。これを常温暖房に再利用すれば、35度から25度の間の熱も使えるので、エネルギー効率はそれだけで2倍になります。

 「普通」の良し悪しは各自で判断できます。ここで話題にしたいのは、その「普通」の恐るべき頭の支配力。意識すれば、よりよい家の設計できます。オーナーは指導者になれ。

◆ 家は業者の自動販売機

家を考える人は賃貸にするか自分の家にするかの選択をするとき、極端な2点を検討してほしい:ホテルにするか、山奥の自給自足の家にするか。

 投資額のレベルを同じにした場合、0−100%のランニングコストだけか初期投資だけかという両極です。

 ごく「普通」に自分の持ち家に住んでる人はオーナーでもローンの返済や管理費など、賃貸に近い要素があります。その上、毎月毎月業者にお金を払わなければ快適に暮らせません。電力会社、ガス会社、上下水同局などのお世話になります。そのお金の流れは非常にスムースで、直接口座引き落としです。実は、多くの家は大手業者や独占企業の自動販売機になっています。

 よく見ると、強引な面もあります。家の構造上、仮に雨が降っても、雨水利用の設備がありません。電気を解約できますが、その結果、お風呂はガスなのに、沸かせません。自分の持ち家なのに、年金生活のときこそ家計に響く定期的出費が発生します。

 生涯利用する家は老後の家計の負担になるより、安心を与えてくれる生活基盤になってほしいものです。

◆ ランニングコスト0

ランニングコスト0の魅力

 住まいのコストは多くの人の生活コストの中の大きな割合を占めているだけに大切です。家の購入コストと毎月のランニングコストを家の寿命と合わせて考えると、ランニングコストは恐ろしい。将来で発生するもので、購入時で無視しても、実際は年々かさばります。

runningcost0merit2.gif

 特に熱系のコストに注意する必要があります。熱系の燃料代が仮に現在より高くならなくても、家計の負担はだんだん大きくなっていきます:
  1. 現在、一般家庭の収入は減る動向にありますが、同じペースで光熱費を減らすのは難しい。絶対額が減らなくても、負担の割合は増えます。
  2. 国の税制は所得ベースから出費ベースに変わって行く公算です。消費税の負担は増えます。
  3. 日本の年金制度を見ると、現役のときと年金生活のときの現金収入がさらに開きがあります。老後の期間こそ、光熱費の負担は大きく感じるでしょう。


  4. 老後の期間で、家にいる滞在時間は増え、体の動きが減ります。同じ人、同じ家でも、燃料消費は増えます。
 エコライフラボが推進するランニングコスト0住宅はそれを緩和します。化石燃料は使用しないので、為替の影響は受けにくいです。太陽は熱源として最高に安定しています。いくら使っても無料で、消費税増税は影響ありません。最初から全館常時常温暖房で、使用者の年齢と生活スタイルで運用の仕方はあまり変わりません。

◆ 家の燃費

ある建売住宅開発会社の企画担当と太陽熱システムの話をしたら、突然面白いこといわれました。太陽は熱源として永久無料といったときです:「興味がない!」。

 多分かなりびっくりした僕の顔を見て、こう説明してくれました。「光熱費はどうでもいい。客が払うから」。なるほど。物売りの市場原理。安く造って、格好よく見せて、売る。その後の出費は販売側の問題ではないのは役割分担の切り口の当然な結果です。
 確かに、日本(*1)では家の燃費の分かりやすい評価基準がない。家の使い方、ライフスタイルなどでばらつきもあるでしょう。しかし、家の寿命全体にわたって光熱費が建築費を上回ることが考えられます。

オーナーの意識の出番です:百円の燃料か百円の断熱材、買主に選択枝があります。

 販売主は興味がないからこそ、買主は家の燃費に注目を。

(*1)2008年4月現時点。ドイツなどではエネルギー証明書(EnergieZertifikat)制度があります。

◆ 化石燃料も核燃料も要らない住宅

「自分の家」とは言え、世界とかかわっています。過去と将来にもかかわっています。資源消費と廃棄物排出はその極みです。

実験住宅
実験住宅
 云百万年間かけてできた石油、これから厄介なゴミを大量に吐き出す原子力を「自分の家」で利用したくない人が増えています。
 幸い、住宅においては、それらの技術の必要性はもうありません。現在の当たり前になっているエネルギー消費機器と当たり前になっている家を一対一に自然エネルギーで運用するのは可能です。たとえば、太陽光発電とバイオ燃料でできます。

 しかし問題はそれだけにとどまりません。今の「普通の家」「普通の家電」などは石油文化で開発されているものです。自然協調型で世界と将来に悪影響のない家は姿も建材も石油文化の家に変わります。

もちろん主な熱源は太陽。主な電源は太陽。しかし最大のメリットは無駄を意識し、なくする努力から生まれます。

 例えば、真夏の西日を嫌いながらも、お風呂をガスで沸かす人がいます。僕もそうです。
 例えば、冬の風呂の水を35度で排水に捨てると同時に、別の機器で暖房をする人がいます。僕もそうです。

 エコライフラボは西日の太陽熱のお風呂での活用、換気の熱回収、排温水の常温暖での再利用などを案内しています。ロス削減で外部から家に入れないといけないエネルギーを減少する技術を大切にしています。

 自然エネルギー文化で作られた家は仮にワットアワーあたりの単価が高くても、経済性が向上すると見込んでいます。

◆ 快適放題の家

遊び放題、食べ放題は聞いたことがあっても、快適放題は?


【快適放題の家の定義】
 快適放題の家は、ヒーティングとクーリングを効かせても、もうそれ以上快適にならない。常に快適です。もっとエネルギーをほしくならない家です。住む人には節約や我慢ではなく、最高の贅沢です。

【快適放題の家の要素】
 日本の多くの地域の気候が世界的に見てあまり厳しくないからこそ、古典的「普通の家」は、例えば壁の薄い、隙間風の多い家で良かったのです。しかし現代の生活で快適に住みたいならば光熱費が異常に高く、環境破壊につながる家になってしまっています。
 日本の冬は寒すぎ、夏は暑すぎで、平均はちょうど良いぐらい。バッファーがあれば、ヒーターもクーラーも要らなくなります。結果的に環境と財布にうれしい家ができます。かといって、人間を魔法瓶に入れるわけにはまいりません。

 そこで、エコライフラボの薦めている快適放題の家のための要素技術です:太陽熱、外断熱、太陽光、西日対策、日陰、蓄熱、保温、温度調整、湿気調整、熱回収、強制換気、放射熱、放射冷却。いずれも主に建築で実現します。どうしても建築だけで間に合わない場合のみ機器で補助します。

◆ 室内気候

日本語で言う「空調」は言葉の乱用です。

 空調と文字通り解釈しますと空気の調整になり、温度と湿度の制御で終わってしまいます。しかし、気候はいろんな現象の豊富な組み合わせです。
 建物に空調設備を付けるのは最終手段であり、設計の非常逃げ道みたいなもの。例えば冬の太陽のありがたさは気温と湿気と直接関係なく、放熱と輻射熱で生まれます。「空調」という言葉で片付けてしまうと仮に適温を設定できても、気持ちのよい室内気候は実現できません。

 人が快適と感じる気候は少なくとも気温、湿度、物体の表面温度、放熱、輻射熱、物体の質感、騒音、香りに依存します。建築はそれに答えなければなりません。

 エコライフラボは日本の家は日本のモンスーン気候に合わなければならないと考えています。寒さ防止は躯体ヒーティング、暑さ防止は空気冷却で行います。冬の乾燥は建物自体の自然建材で緩和され、夏の湿気は強制結露で処理されます。主熱源は太陽、主な冷却方法は放射冷却です。



ecoLifeLabo_logo.jpg エコライフラボ

Midori Kitajima